9日目午後「天然循環法 – 農 実習1」〜 微生物を知ろう・ボカシと活性液作り

今日の午後は農の実習でした。講師はカトケン。畑隊の若手で、かつて農業高校の講師をしていました。

カトケン
カトケン

まず、最初の実習は「ボカシ作り」。ボカシという言葉、あまり聞いたことがないと思いますが、簡単にいうと、発酵させた有機肥料のことです。

受講生が仕込んだボカシ
受講生が仕込んだ発酵前のボカシ

今回は一番シンプルな素材で作りました。
米ぬか10kgに籾殻1kg。そこに、有用微生物が200種類以上含まれる木の花菌(EM菌)から作った活性液と水分を加え、ダマにならないように揉みほぐしながら、丁寧に手で混ぜていきます。米ぬかには油分が多く含まれ、混ぜている手もしっとり。みんな「気持ちいい~!」「おいしそう!」「お菓子を作っているみたい」と楽しそうに混ぜていました。

ボカシの語源は、話をぼかす、色をぼかす、と同じ様な意味合いがあり、有機肥料を微生物により発酵させて、原形からぼかすところからその名前がつけられたとも言います。発酵させることにより、そこにはたくさんの微生物が繁殖し、植物に吸収しやすいものになるのです。

この世界には、空気中にも、土にも、野菜や穀物にも、人間の体にも、目には見えないけれど、あらゆるところに微生物や菌が存在します。微生物や菌には大きく分けて「腐敗」と「発酵」という2つのサイクルがあり、どちらも必要なのですが、発酵の方が私たちのような生命にとって健全なサイクルと言えます。

IMG_3420悪玉菌が活躍すると「腐敗」の方へ傾き、善玉菌が活躍すると「発酵」の方へ方向づけられます。数多くある微生物や菌のうち、善玉菌といわれるものは約1割。悪玉菌といわれるものも約1割。残りの約8割のものが「日和見(ひよりみ)菌」だといわれています。つまり、どっちにも行く可能性のあるものが大多数なんですね。受講生から「菌の世界も、人間の世界も同じだね。面白い!」という感想もありました。

そこで、いかに善玉菌を優勢にしてやるか、発酵の方向へ持っていくかがポイントになってきます。善玉菌が優勢になるためには、適度な温度や水分、空気という環境を整えてあげる必要があります。米ぬか自体にも菌がいるので、環境を整えてあげれば発酵が始まりますが、より発酵の方へ方向づけるために、今回は木の花菌を使いました。

その混ぜたものを、ビニールの袋に詰め、しっかり空気を抜いて、発酵させます。こうして発酵させることにより、例えば豆腐のオカラのようなとても腐りやすいものも、米ぬかなどと一緒にボカシにすると、1年以上品質が変わることはありません。

ボカシを袋に詰めます
袋に詰めて、しっかり空気を抜きます
チームごとに名前を決めて貼りました
チームごとに名前を決めて貼りました
こちらは「チームひふみ」
こちらは「チームひふみ」
こちらは「ビューティフル・マインド」
こちらは「ビューティフル・マインド」

私たち人類は発酵という文化をいろいろと発展させてきました。農業分野に限らず、味噌、醤油、納豆、ヨーグルト、チーズ、パン・・・などなど身の回りにはたくさんの発酵を利用したものがあります。畑の土の中にも、たくさんの微生物たちがいます。
そして、その微生物や菌は、目に見えない非常に微細な存在で、だからこそ、それを扱う者の発するものが、ダイレクトに伝わってしまいます。
私たちが、畑に立つ時、作物と接するとき、ボカシを作るとき、木の花菌を仕込むとき、子供に接するとき・・・いつでも一番大切にしていることは、そこに向かう心です。
そう考えると、いつでもどこでも自分からいい空気を発することの大切さを改めて確認しました。

順調に発酵したボカシの香りも嗅いでみました。いい匂いです。
順調に発酵したボカシの香りも嗅いでみました。いい匂いです。

次は、「生ごみを利用した堆肥作り」です。
毎日家庭から出る生ごみ。普通は燃えるごみとして焼却されますが、その約4割が生ごみだと言われています。水分をたくさん含む生ごみは、燃やすのにも多くのエネルギーが必要です。
この実習では、通常ごみでしかないものを、資源として生かす。そして、さらに生ゴミを減らすことで環境負荷も減らせる、という生ごみの有効利用を学びます。

生ゴミを有効利用!
生ごみを有効活用!

用意するものは水切りが出来るスノコのついたバケツ。(ホームセンターなどでも入手できます。)そこに、よく水を切った生ごみを入れ、発酵させるためにボカシを振りかけて混ぜ、手で押して空気を抜きます。それを繰り返して、漬物を作っていくようなイメージで仕込んでいきます。

見た目も香りもお漬物のようです
見た目も香りもお漬物のようです

最後にビニールの蓋をして空気が入らないようにし、きっちりとバケツの蓋をします。

約1週間おいておくと、菌が全体に回るので、いわゆる生ごみ臭さもほとんど無く、それを畑に埋め込んで、畑の肥料として使うことが出来ます。畑のない場合は、それを2倍量の土と混ぜ、生ごみ堆肥にすると、腐敗することなく、いつでも使いたいときに使うことが出来ます。それをプランターの土に混ぜて使ったり、畑にまいたりするのです。

土に混ぜれば
土に混ぜれば生ごみ堆肥に♪

ボカシにしても、生ごみ堆肥にしても、産業廃棄物になってしまう豆腐のオカラや、ごみでしかなかった生ごみが、「発酵」を利用することにより、捨てられてしまう「ごみ」ではなく、「資源」として生かしていけるということなのです。

* * * * * * *

野外での実習を終え、室内に戻って、ちょっとティータイム。
受講生から、質問や感想なども出ました。
実家で母親が家庭菜園をしているというあっこちゃん。今まで畑に生ごみを入れると、くさいと周りから苦情があったそうですが、今日学んだことを、早速お母さんに教えてあげたいと言っていました。

さて、次は「活性液作り」と「米のとぎ汁活性液作り」。
調理実習の時のように、テーブルにはボウル、計量カップ、泡だて器などが並べてあります。

活性液は、木の花菌に糖蜜を加え、発酵させます。木の花菌は200種類以上の有用微生物が含まれる液体で、そこに餌となる糖蜜を加え、約40℃のお湯で溶かします。

木の花菌に糖蜜を加え、お湯でといていきます
木の花菌に糖蜜を加え、お湯でといていきます

微生物に餌を与えることで、微生物たちを活性化させるのです。2~3日するとペットボトルがパンパンに膨らみキャップを緩めるとプシュッとガスが抜けるくらい活性化してきます。

この活性液は、畑の作物に葉面散布(スプレー)したり、野菜の苗の水やりに毎日入れたりして、植物を元気にするために使う他、掃除の時に使うと汚れの落ちがよくなり、排水口が臭う時などに流し込むと、臭いが消えたりします。これらは微生物の働きによるものです。

米のとぎ汁活性液は、米のとぎ汁に木の花菌と餌となる糖蜜を加え、発酵させます。使い方は活性液と同じです。

米のとぎ汁と言えば、みなさん「水素水」というものをご存知ですか?
お米(玄米でも白米でもOK)を研ぐときに出る3回目のとぎ汁を密閉できる容器に入れて24時間(夏場は12時間)置くと「水素水」の出来上がり。
水素水は、体内の活性酸素を中和するので、飲むことにより老化防止、腸内環境改善、デトックス効果などの他、掃除の時に使っても汚れ落ちがよくなります。木の花ファミリーでは、キッチンさんが毎日作ってくれるんですよ。(詳しくは、白魔女の天然生活 at 木の花ファミリーをご覧ください。)

話を戻しますね。活性液と米のとぎ汁活性液を作ったら、ペットボトルに入れ、あとは人肌程度が適温なので、毎日一緒にお風呂に入ってもらって、発酵を進めます。ガスが発生し、糖蜜の匂いが消えて甘酸っぱい匂いに変わったら出来上がりです。微生物たちが活発に活動しているのがよく分かるはずです。

かつての真学校では、一緒に布団で寝て、布団の中で爆発してしまうという事件?やお風呂の中で爆発してしまったこともありました。今年は無事発酵させることができるでしょうか・・・?!(活性液爆発事件についてはこちらをご覧ください。)

全体を通して、受講生たちからいろいろと質問が出たりして、楽しい時間でした。オランダから参加している大学院生のニナは、国に帰ってからやってみたいと言っていました。

・・・という訳で、こんな風に、微生物や菌は、目には見えないけれど、とても身近なものなのです。

 

さて、どんな活性液ができあがるでしょうか
さて、どんな活性液ができあがるでしょうか